人は皆自分の世界を持っていて、それがどれだけ広いかで、将来の相手とか、交友関係とか、自分の力がどのくらいなのかが分かる。逆に狭いと、将来の相手が見つかんなかったり、変な人たちのグループに入ってしまったり、自分の力を過信してしまう。
 そして、自分の中で一番の人が見つかった時、その人はその世界の神様となる。

 それはまあ置いといて、私は好きだった彼と別れた。いや、これだと私は嘘をついてしまっている。正直に言うならば、好きな彼と別れたのだ。別れたと言うのものの私は未だずるずると引きずっている。ていうか、一方的なものだった。ドラマ的に言うなら、引き離されたようなもの。ああ、馬鹿な女だと誰か笑ってくれればいいのに。嘲笑って、一緒に自棄酒でも楽しんでくれればいいのに。だけどそんな人間もいなくて、皆優しい奴等ばかりで本当に困った。

 そもそも、なんで私はアイツの事が好きだったのだろう。ぶっちゃけさ、こんなに本気になるなんて、思わなかった。もっと軽いものだと思ってた。学生の時の恋愛みたいな感じでさ、好きだ好きだ言っても、結局は続かないような、そんな感じの恋愛。世界は思った以上に広いからさ、すぐに他に好きな人が出来た、って感じなそんな恋愛。大人になってもそれは変わらないと思ってた。仕事先で良い男見つけたら、またいないかと彼方此方探したり、もし彼以上好きになったらあっさり振ったり。そんな恋愛をすると、思ってた。
 だけど大人になって広まった私の世界は、もうコレが限界みたいでさ。この中から将来の相手を決めるって言ったら、アイツしかいなくてね。それで、アイツも私しかいなくて、それなら結婚しよっか?とか軽いノリで聞いてきて、私は頷いた。私の世界での神は、アンタだった。

 高い洋服なんて欲しくない、なんて嘘だけど、私の生活がまずくなりそうだったからいつも安い服着てた。煌びやかなアクセサリーだって、本当は物凄く欲しかった。ワンランク上のディナーだって食べたかった。でも、それをアイツに強請ってしまうのは、プライド的にもなんだか嫌で、私は自分から中流の店に入った。
 ああ、私は何も贅沢しなかったのに、どうして?どうして別れなきゃいけないの?どうしてアンタは其処に行かなきゃいけないの?そこには私より良い女がいると言うのですか?これでも私はモテる方だと思うの、そんな私放っておいたら他の誰かの所に行っちゃうよ?いいの?それでもアンタはいいの?
 高い洋服買えなくても、アンタがかわいいと褒めてくれれば良かった。煌びやかなアクセサリーでなくても、似合うと言ってくれれば嬉しかった。ワンランク上のディナーが食べれなくたって、ただ私の手料理を美味しいと食べてくれればそれで、良かった。

「結婚しようって言ったじゃない・・・」

 新婚旅行は何処にしようかって、アンタわざと高いところ選ぼうとしてたじゃない。でも今の状況では危ないから、落ち着いたら目一杯楽しもうって言ったじゃない。来月には正式に夫婦だねって意味もなく笑ったじゃない。子供が出来たら何ようって話しを覚えている?アンタは黒曜ヘルシーランドとかいう所をもう一回建て直して、そこで皆で遊ぼうって言ったのよ?植物園には私の好きな花植えて、動物園には大きなキリン持ってきて、そこに兎や鳥とかのふれあえる場所もあったら面白いねって、後は休憩所はなるべく広くした方がいいって、言ったじゃない。
 本当に、馬鹿だ。馬鹿以外の何者でもない。

「ありえない・・・馬鹿・・・・・・・・・・・・しね」

 馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!!結婚も新婚旅行も皆全部アンタが死んだら意味が無いんだよ。アンタが居て全部出来ることなんだよ。それなのになんで?なんで死んだ?なんで逝ってしまうの?天国に良い女でも見つけたの?ありえないよ、最低。

 しゃっくりをあげて、立ち上がった所で、ガタン、と私の目の前の棺が揺れる。まさかそんなと唖然となっていると、出てきた人は私が知っている奴よりも、幼かった。それでも、アイツだとすぐに分かって、自然と泣きはらしてひどい顔が、久しぶりに笑顔になれた気がした。だけど涙しか覚えていないこの顔で笑うのは、少し痛かった。
「・・・え・・・?・・・・・・誰・・・?」
 恐らくこの年のアイツは私を知らない。という事は中学生のアイツ。となると、ランボの10年バズーカなのだろうか。奴はきょとんと、気まずそうに私を見上げる。
 なぜだろう。久しぶりに会えたというのに、嬉しさよりもまず罵倒する言葉ばかり浮かんでくる。ああどうしよう、嬉しすぎてまた泣きそうだ!











に神が戻った
「ああ、もう馬鹿!!綱吉の馬鹿!!」「え、ええ?!(何この人?!)」