私は髑髏の事を好きでも、嫌いでもない。それはどんな感情かと言うと、あまり『話したことのないクラスメート』と言った所か。 行事、もしかしたら授業中に話したりはするだろうが、一緒に帰ったり、出かけたりしない関係。(そりゃあたまには例外もあるけれど。)それに、私としてはこの先どんなに髑髏と話す機会が増えようが、決して『仲の良い』関係にはなれない気がした。正直これは勘だ。勘と言っても、ツナの勘は良く当たるらしいから舐められるものでもない。が、私の勘はよく分からない。五分五分という所。 だけどそれは、互いにそうだと思っていたのに。 それはとても控えめでたどたどしい言い方だったが、普通にその意味を解釈するならば、私と同じ班を希望しているんだろう。 普通に疑問に思った。私なんかが同じグループに入ったって得をする事など一切無い。もしここで、私が余り物として除けられていたのなら、まだ話は分かる。が、私は『まだ』除け者にされていない。(…うん。)だったらなぜだ?意味なさ過ぎだろう。 「…髑髏、なんでと?」 ただ純粋に気になったのか、ツナは言う。どうとも取れない聞き方を奴はしたが、若干私に対して失礼だと気づいているだろうか。「……」だけど俯いてどうとも答えようとしない髑髏に、獄寺は突っかかった。 「おいテメエ、十代目のお言葉を無視する気かよ」 「……」 「獄寺君、いいよそんな…」 どうも最近ツナは獄寺の扱いに慣れてきた気がする。もしコレが中1のツナだったら慌てるだけだった、と思う。ツナは、見た目も雰囲気も、この中学校生活の中で、どこかしら、変わった。 「そ、そうだね、ほら、3人とも黒曜だし、並中の私が居た方がよくない?」 「……の言う通りだね。じゃあ黒曜の三人とで一チームね」 「じゅ十代目!甘やかしちゃ駄目っスよ!」 「…心配になるのは分かったから、今は髑髏の意見を尊重しようよ」 そう言われて、ハタと気付く。あの髑髏がこうしたいと訴えたのだ。付き合いはかなり短い、と言うか昨日会ったばかりだけれど、彼女の基本的な性格は知れたような気がする。髑髏は表立って意見を言う性格では無い、と私は考えていた。それはただの憶測だったけれど、ツナのその言葉を聞くにあながち間違いではなさそうだ。 という訳で、私は城嶋・柿本、そして髑髏と組む事となった。 別に、何度も言うようだが私としては、この中の誰々が嫌い・というのがないから、別に班を組むには誰とでも良かった。でも、流石に目の前がコレだと気分が滅入る。 「だー!!だからお前こっち来んなっつの!」 「……ごめん」 「その謝り方もムカつく!!」 じゃあどうしろって言うんだ。 先ほどから、この城島と髑髏の喧嘩(誰から見ても一方的だけれど。)は絶えない。柿本は柿本で、無視を続けている。なんとなく、コレは日常茶飯事なんだと分かった。 「ほんっと、なんで骸さんじゃなくてお前なんだっつの!」 ああ、また出た「骸さん」。そういえば、昨日髑髏からなんだか様の話を聞いたけれど、もしかしてこの「骸さん」と関係があるのではないだろうか。そうじゃなきゃ、髑髏だってこの輪の中には入ってはいないだろう。勿論、これもただの勘だけど。 それにしても城島は飽きないな、と素直に思った。 「…柿本、なんで止めないの?」 「……止めても無駄だし…めんどい」 「ふーん…」 なんだか、私は柿本も髑髏に対してそんな良い感情を向けてないと思った。確かに、好きだったら最初っから止めているかもしれないけれど、柿本が止める時は本当に僅かだ。ただ話しを進めたいとき、だけ。 もしかしたら、柿本が一番性質が悪い。 「ああー、もう分かった分かった。髑髏、私と歩こ?」 「……うん」 城島が何か言いたげな表情をしていたけれど、私は問答無用で髑髏の腕を引く。これで前には私と髑髏、後ろには柿本と城島になる。 髑髏は無理に腕を引かれたせいで、少し三叉槍を落っことしそうになりながらも私に言う。「ありがと…」 返す言葉も見当たらなかったので私は軽く頷いた。 私達に任せられたのは北校舎2階と3階。となると、最初に探した時とかぶる。まあ、音楽室は4階、だけど。 「つか達はさ、なんでこんな事になったの?」 「こんな事?」 「ほら、オレらみてーに寝てたとか?」 城島は、私の隣にいる髑髏を完全に無視をして、聞いた。 「いや、…私達は……」 どうしよう、すっごく言いづらい。 城島達みたいに、巻き込まれた感が物凄くある人たちの前でなんと言えばいいんだ。「肝試しをしようとしてました」、なんて酷すぎる。それに、もしかしたら肝試しをし始めた私達に原因があるかもしれないのに。 だけど嘘を吐いてもどうせバレるのだろう。 「…き………」 「き?」 「…き…、肝試し…しようってなって…」 「…は?」 城島は真顔で聞き返す。が、これが私達がここに来てしまった紛れも無い事実なのでどうする事も出来ない。私だって、泣けるもんなら泣きたい。あの時どうしてでもリボーンの計らいを止めていれば良かったんだ。 「まあ、別になんでもいいけど」城島は平然とそう言った。 会話無いなあ、と階段を登っていると、急に嫌な予感がした。急に、だったので私は思わず立ち止まってしまう。そのせいで私の後ろにいた柿本が私にぶつかった。 「……急に止まらないでよ」 「ご、ごめ……」 ピタリと止まってしまった。ただ、私は後ろを見て柿本に謝ろうとしていただけなのに。「…どうしたんだよ」城島はダルそうにそう言った。 上手く説明出来ないでいる私を見て、隣の髑髏がつられて後ろを向く。 「…う、後ろ…!!」 「は?ンだよ…」 皆が皆固まる。一瞬一瞬が、いつもよりも長く感じた。 「……階段、消えてる…」 |
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